融資の際の団体信用生命保険は加入するべき?

個人事業主や法人が金融機関から融資を受ける際に団体信用生命保険(団信)を利用できるケースがあることをご存じでしょうか。団信の利用は住宅ローンが代表的ですが、事業融資でも利用可能です。

そこで今回の記事では、事業融資に関する団信を取り上げその加入の意義などを解説します。「借入後の経営者の万が一を心配している」「保険料(特約料)支払いに不安がある」「団信の特徴を知りたい」といった方は、ぜひ参考にしてください。

1 団体信用生命保険とは

団体信用生命保険とは

団体信用生命保険とは、金融機関(債権者)を契約者とし、その金融機関から融資を受けるなどの債務を負う賦払債務者を被保険者とする団体生命保険のことです。事業を行う個人事業主や法人が金融機関から融資を受ける場合にも団信が利用されています。

団信では被保険者の死亡や高度障害状態により受けとる保険金は通常、残存債務の弁済にあてられ金融機関等は債権回収が可能となる一方、債務者の遺族等は債務負担がなくなる或は軽減されるのが特徴です。

事業融資に関連した団信サービスを提供する主体は以下の2タイプに分かれます。

 

1-1 公的金融機関の団信

公的金融機関の団信

事業融資に関係の深い日本政策金融公庫(日本公庫)等と信用保証協会が保険契約者となった団信が提供されています。この団信への加入は任意ですが、融資を受ける際にその申込みが可能です。

公庫団信保険 公庫団信は、日本政策金融公庫(沖縄振興開発金融公庫を含む)の利用者のために公益財団法人公庫団信サービス協会が提供するものです。同協会は団体信用生命保険の保険契約者となり、利用者の公庫からの借入残高を保障し、個人事業主や法人の経営の維持安定や家族の安心を確保する目的で設立されています。
保証協会団信保険 保証協会の保証付融資について、社団法人全国信用保証協会連合会と生命保険会社の間で、中小企業者等を被保険者とする団体信用生命保険契約が締結されその団信サービスが提供されています。公庫や保証協会への債務を完済する前に被保険者が死亡・高度障害となった場合、両機関が生命保険会社から保険金を受け取り、それで金融機関への債務を弁済する仕組みになっています。

 

1-2 民間の金融機関の団信

民間の金融機関の団信

銀行や信用金庫などが企業等に融資を行う際に用意するタイプです。団信の加入を条件に融資を行う場合と加入が任意などの場合があるほか、加入が条件となる融資の場合は保険料の支払いが金融機関の負担となっているケースもあります。

また、被保険者の経営者に万一が生じた時には保険金により借入金残額が返済される仕組みも見られます。

なお、経営者リスクに備える方法では、団信以外にも経営者(法人向け)向け生命保険などの利用も有効です。

2 公庫団信と保証協会団信の特徴

公庫団信と保証協会団信の特徴

公庫団信や保証協会団信には以下のような特徴があります。

 

2-1 借入残高の返済

公庫団信等では、経営者の万が一の場合に保険金で融資返済が行われます。融資を受ける際に経営者が連帯保証人になるケースは多いですが、その経営者が死亡した場合連帯保証人の地位は相続人の家族に相続されます。つまり、家族が故人の資産を相続する場合には融資の残債を負うことになります。

しかし、経営者が公庫団信等の被保険者になっていれば残債は保険金から返済されるため、家族は残債の返済を心配する必要がなくなります。

 

2-2 特約料と保険金の税務上の取扱い

特約料と保険金の税務上の取扱い

公庫団信の場合の特約料と保険金の税務上の取扱いは下表の通りです。

加入者 特約料 保険金による債務弁済金
法人の場合 損金算入が可能 益金扱いで課税対象
個人事業主の場合 損金不算入(経費対象外) 非課税(所得税の課税なし)

 

上記は税務当局の一般的な見解であるため、詳細は各税務署等で確認する必要があります。なお、特約料は年末調整や確定申告の生命保険料控除の対象外です。

 

2-3 簡単な手続や支払方法

公庫団信への申込みは「申込書兼告知書(事業資金)」(傷病名が3つ以上ある場合は「告知事項(追加用)」による提出となります。

保証協会団信の場合は「団体信用生命保険による債務弁済委託契約申込書」と「『保証協会団信』申込書兼告知書」による提出となり医師の診査は不要です。なお申込金額が、5千万円を超える場合は健康診断結果証明書の提出が必要になります。

両団信での特約料(保険料)の支払いは年1回の口座振替等となっており簡単です。

 

2-4 特約料

100万円を借入しこれを5年間の元金均等返済した場合の公庫団信と保証協会団信の特約料は下表のようになります。なお、上記の両団信の特約料は生命保険会社の企業向け保険の保険料よりやや高いと見られることもありますが、保険会社、契約内容や税務上の取扱い等による違いもあるため一概に高いとは言えません。

単位:円

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 総支払額
公庫団信 2510 1960 1410 850 300 7030
保証協会団信 3950 2970 2130 1290 450 10790

 

2-5 団信の保障内容

団信の保障内容

公庫団信等の保障内容は下記のようになっています。

 

●保険金支払の対象

1)被保険者の死亡

2)保障開始日以後の傷害または疾病により、下記のいずれかの高度障害状態に該当した場合

  • 両眼の視力を全く永久に失う
  • 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失う
  • 中枢神経系または精神に著しい障害を残し、終身常に介護を要する
  • 胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要する
  • 両上肢とも、手関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失う
  • 両下肢とも、足関節以上で失ったかまたはその用を全く永久に失う
  • 1上肢を手関節以上で失い、かつ、1下肢を足関節以上で失うかまたはその用を全く永久に失う
  • 1上肢の用を全く永久に失い、かつ、1下肢を足関節以上で失う

なお、一般の経営者向け保険では、がん保障や生活障害保障なども用意されているため、公庫団信等の保障内容は手厚いとは言えません。

3 団信への加入で考慮すべき点

団信への加入で考慮すべき点

事業融資に関わる公庫団信等を利用する場合、下記のような点を考慮し加入を検討しましょう。

 

3-1 融資への影響

「日本公庫から融資を受けるためには公庫団信に加入しないといけない」と思っているならそれは勘違いです。公庫団信や保証協会団信の加入は任意であるため融資査定に影響しません

そのため団信に入る必要がない、もしくは独自に生命保険を利用したい、などの場合はそれらの考えを採用すればよいでしょう。

 

3-2 特約料以外の検討

公庫団信等の特約料はその他の保険料に比べやや高いと見られることもありますが、そうでないケースも少なくありません。

実際に借入する保険の保障内容、借入金額・返済期間、融資の返済利息・手数料などが各保険で異なるため、特約料・保険料の多さだけで検討するのは不適切です。全体のコストや保障内容など比較して検討しましょう。

特に保障内容は重要で公庫団信等の保障内容は、がんや3大疾病等の疾病の対象や休業保障などがないため、その点を考慮して加入の是非や他の生命保険の利用などを検討することが大切です。

 

3-3 税金負担の検討

公庫団信等の場合、特約料と保険金の税務上の扱いが個人事業主と法人とでは異なるほか、法人向け生命保険の税務処理と異なるケースもあるため、その点を確認した上での検討が求められます。

公庫団信等の場合、特約料の税務上の扱いでは法人が有利(損金算入)で、保険金では個人事業主が有利(非課税)になります。法人向け生命保険では保険金は益金として課税されますが、保険料の損金処理は解約返戻金の内容などで異なってきます。これらの特徴を把握した上で節税を踏まえた利用の検討も重要です。

4 まとめ

まとめ

公庫団信と保証協会団信への加入は任意であり、加入の有無は融資査定に影響しないため、団信の特徴を考慮して加入を検討しましょう。団信への加入は、経営者の万が一の際の備えとして有効で節税にもメリットがありますが、企業向け生命保険の保険料や保障内容と比べて見劣りする点もあるため、他の生命保険などとの比較も行って、検討してみてください。

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